今年4月より中小企業にも全面適用された「同一労働同一賃金」は、働き方改革関連法の一つである『パートタイム・有期雇用労働法』改正によるもの…。
パートや契約社員等と正社員間の不合理な待遇差の解消が目的とされており、その対応が急がれる中小企業等に向けて私なりにまとめます。
目次
働き方改革の3本柱の最後「同一労働同一賃金」への中小企業への適用猶予が、3月までと迫ってきました。(→派遣事業者は、既に昨年4月から全面適用になっています。)
改正法による対象は「短時間労働者・有期雇用労働者」とされており、いわゆる非正規雇用の待遇改善が主眼となっています。(※以下、まとめて「非正規」と表現します。)
その意味で、日本独自の同一労働同一賃金とも言われ、その取り組みに戸惑う中小企業も増えているかもしれません…。
私自身も昨年からの企業支援等を通じて、その対応の難しさを実感しているところです。
とはいえ、4月からはこの『パートタイム・有期雇用労働法』が中小企業にも適用されるのは間違いないことであり、その対応を検討されている担当者とも多いことでしょう。
今回はそうした中小企業等に向けた、基礎的な理解を進めるためのまとめとします。
〔▼厚生労働省の該当リンク〕
同一労働同一賃金の対応が難しいのは、この考え方がどこまで適用され、具体的に問題となる点が見えづらいところかもしれません。
例えば、時間当たりの賃金を同じに揃えなければならないのかとか、正社員やパートなどの区分を今後は続けられないのか?といった、素朴な疑問も出てくることでしょう。
国でもどのような待遇差をどのように見直すべきか、「同一労働同一賃金ガイドライン」という形で、既に2年程前から考え方(指針)を示しています。
各企業では、賃金制度を賃金規定(評価制度)・賃金表等で定めていることも多く、一朝一夕にはその変更ができないことも事前に示された理由でしょう。
待遇差の比較には、この2つの視点が示されています。「均衡待遇」とは、簡単に言うと「正社員と非正規間の待遇について、バランスがとれた差異になっている」ことです。
一方で「均等待遇」は、「同じ仕事をしている正社員と非正規が居る場合は、待遇を同じにする」という厳密な対応が求められます。
その判断基準には、「①職務内容、②職務内容・配置の変更の範囲、③その他の事情等」があげられ、それらを総合的に判断する必要があります。②について補足説明すると、「異動や転勤の有無とその範囲」であり、「人材活用の仕組み」等になるかと……
上記の詳細解説やガイドラインによる判断基準の内容は、厚生労働省のホームページからも見ることができます。
〔▼ガイドラインへのリンク〕
主な内容は、基本的な考え方に加え、具体的に「基本給、賞与、各種の手当(役職手当・特殊作業手当・精皆勤手当・通勤手当等)、その他福利厚生等」について、「問題になる例・問題にならない例」が解説されています。
その他、正社員と非正規間で賃金の決定基準やルールに相違がある場合、上記3つの判断基準を勘案して不合理なものであってはならないとされます…。(同指針P7(注))
加えて、福利厚生・教育訓練については「食堂・休憩室・更衣室」といったものや、慶弔休暇や病気休職等も同一にしなければならないとされています。
総じてこれらの考え方のベースは、いわゆる判例(過去の重要な裁判例)がもとになっているものと思われます。
今回のパートタイム・有期雇用労働法改正の中で、ポイントとして掲げられているものに「従業員への説明義務」と「紛争解決制度」があります。
従業員への説明義務とは、言葉の通り上記のような待遇差に関して説明を求められた場合に、事業主は説明を尽くす義務が課せられたということです。非正規労働者が納得できるような説明ができなければ、紛争の火種になるケースが増えるとも言えるでしょう・・。
そのためか、労働局による紛争解決機関である 行政ADR(裁判外紛争解決手続、話し合いによる紛争の解決)も整備され、労働者の救済が図られているところです。
上記ガイドラインに基づく対応や従業員への説明義務を果たすためには、当然ながら自社の現状を把握する必要があります。果たしてどのような不合理な待遇差があるか、もしくはないかを、法施行までにまとめておく必要があるでしょう。
その中で、明らかに不合理とされる恐れのある待遇差については、解消の方向づけをしておく必要もあります。基本給に代表される、すぐに対応できないものについても、最低限その方向性は決めておくべきでしょう。
その際の考え方は、上記ガイドラインを最初の通過点として、ガイドラインに記載がない「家族手当」や「住宅手当」等についても検討を進める必要はあります。
そうした手当の他に待遇差の判断が難しい「賞与」や「退職金」等についても同様に検討が必要であり、判例等も参考にしながら進めていけば良いかと・・。
昨年10月頃に、こうした正社員と非正規従業員との待遇差に関する最高裁判決が相次いで出され話題になっています。判決内容は個別の事情に基づくため、そのまま適用できないとはいえ、判決理由に見られる考え方は大いに参考になるものです。
まとめると、3月いっぱいまでには、中小企業でも最低限ガイドラインに明示された手当等を中心とした対策と、その他の部分を含め今後の方針を決めることは必要でしょう。
その際の具体的なやり方として、厚生労働省作成パンフレット『パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書』の活用が入り口としてよいのでおすすめです。(この詳細は別にまとめる予定です。)
以上、4月からの中小企業への同一労働同一賃金の適用に向け、私なりにまとめました。
もしまだ未対応であれば、今回の記事も参考に取り組んでいただければと……
〔あとがき〕
1月はちょっとした変化があり、2月はさらに本格的に様々な出来事が続いている状況…。そんな中、仕事のついでにしばし立ち寄った太平洋側の海に癒されました・・。世の中と同様、気をぬけない状況はしばらく続きそうです……
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