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社労士の手続業務で気をつけたい3つの鬼門とは?

労働社会保険制度は複雑なため、実務上で間違いやすい点が多いものです・・。
そのための社労士制度ながら、社労士自身にも「鬼門」があることについてまとめます。

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複雑な制度設計であることを知る

労働社会保険手続は、社会保険や雇用保険などを入口とする労務管理の中心と言えます。
あらためて社会保険労務士は、企業等から依頼を受け、そうした業務に日常的にあたっています。

実際のところ「労務管理」と言ってもイメージがわかないはずで、個人的に分りやすい「労働法務」、または「雇用関係法務」とでも言い換えて良いと感じます。
ようするに、労働社会保険諸法令と言われる法律が根拠となる手続なのですから・・。

そのため、一般にイメージする保険と異なる複雑な制度になっていることがほとんど…。
国民が対象という公共性と行政機関による厳格な運用等を前提とし、制度が法令によって細部に渡って設計されてもいます。
このことを知った上で、実務に臨んだ方が良いかもしれません・・。

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手続業務で気をつけたい3つの鬼門とは?

ここでは、特に気をつけたい手続業務等をあえて「鬼門」と強調表現しています。実際には定型的な部分もあり、慣れてしまえばそれほどでもないかもしれませんが・・。
以下、そうした業務を私なりに3つあげます。

1.高年齢雇用継続給付の受給資格

高年齢雇用継続給付とは、60歳以上も引き続き雇用される従業員に対し、一定割合の賃金低下があった場合にその一部を給付金として支給する制度です。もともとは、定年後の高齢者を雇用する場合に、賃金がある程度下げられても雇用が継続するよう促す(下がった一部分を補てんする)目的で作られました。
受給資格は単に60歳以上であれば良いという訳ではなく、原則として60歳到達時点で5年以上の雇用保険加入(被保険者)期間が必要です。定年まで長く勤めた方はほとんど問題ありませんが、60歳前後に転職が多い場合は資格期間を満たさないケースもあります。
資格期間の認定には「60歳時賃金登録」という手続が必要です。上記の問題となるのは、転職等で60歳時点で5年の期間を満たさないケース。当然、給付金は受けられません…。
しかし、60歳時点で5年を満たさなくても、この後勤め続けて5年を満たした時点(60歳以上~65歳未満)で受給資格が発生して改めて賃金登録をすることができます。こうした例はレアケースとなることが多く、本人はもちろん実務担当者でさえ見落としがち・・。
この他にも前職との通算や失業給付を受給した場合、またこの制度の中では再就職給付金の受給も結構複雑です。

2.労災保険・第三者行為災害関係

労災保険については、いうまでも無く事業所で働く方が業務上や通勤中にこうむった病気やケガ等をカバーするための保険制度です。一般に業務中のケガ等の治療費や休業補償をすることがほとんどですね。
その他、障害補償(一時金や年金)や遺族補償(同)などの給付もあります。
労災保険制度は、本来は事業主にある災害補償義務を保険制度で肩代わりする意味もあります。従って保険料は事業主が支払い、給付等は従業員本人が受ける設計になっているのです。
しかし、あくまで無過失責任である事業主に対して、第三者の加害行為等によるケガなどの場合は少し違ってきます。いわゆる「第三者行為災害」と呼ばれているものです。
一般に多いのが交通事故の場合で、相手方の過失が大きい場合は自動車保険でカバーすることが多く見られます。自動車保険(自賠責・任意保険)でカバーされればそれで良いのですが、過失割合によってや相手方の保障が実行されない等の場合が問題です。
この時、先に労災保険で(先行)給付するために第三者行為災害届を出して請求することがあるのです。諸要素が複雑に絡み合い、具体的判断や手続きの進め方がなかなか難しいと言えます。

〔参考書籍〕

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3.国民年金・厚生年金の請求等

年金については、あらてめて言うまでもないでしょう・・。
ここでは具体的には触れませんが、複雑さを挙げたら枚挙に暇がありません…。社労士は年金の専門家として知られるようにはなったものの、具体的な手続等ではなかなか複雑なケースも多いものです・・。

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湧水町の丸池にて

 

初めて手掛けるときは気をつけよう

以上挙げたものでも、上述の定型的部分や慣れた方なら難易度はある程度下がるかもしれません。この記事は、あくまで私の感じている日常業務の体験がベースになります。

とはいえ、他の日常手続(取得・喪失、年度定例業務など)に比べればおそらく取扱い件数は少なく、全てを把握できていないケースも多いかと思います。(もちろん、実際に手がける時は調べた上で対処するのですが…)

その意味で、特に実務初心者が手掛ける上記の手続等は、十分気をつけるべきでしょう。
意外な落とし穴があって、まったく違った結論になることもありますし・・(体験者?)

 

複雑多岐な法令に基づく労働社会保険手続は、同様に複雑なものなのです・・。
今回の記事も参考にしながら、少しでも気をつけていただければと……

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竹中池の上に設けられたそうめん流し

 〔あとがき〕
今年の夏も暑さと○○に耐えながら、なんとか乗り切れたようです…。恒例(希望?)の一人合宿はまだですが、東京出張と今回の写真の湧水町が夏らしい体験だといえば、そういえるかも・・。

 

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・パーソナル編集長


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